ライアーダンス

「ライアーダンス」は、DECO*27が作詞・作曲した日本語の楽曲であり、歌唱には音声合成ソフトウェアの歌声ライブラリである初音ミクが用いられている。2016年5月27日に動画共有サービス上で公開され、同年9月28日発売のDECO*27のスタジオ・アルバム『GHOST』に収録された。題名に含まれる「ライアー」は英語の liar に由来し、歌詞における虚偽、自己欺瞞、恋愛関係の不均衡を、反復されるダンスの比喩によって統合している。

制作

作詞および作曲はDECO27が担当し、編曲はDECO27とRockwellが共同で行った。制作上の基盤には、打ち込みによる一定の拍節構造と、音価を細かく分割したギターのフレーズが置かれている。初音ミクの歌唱データは、明瞭な子音と急速な音高移動を維持しながら、旋律の反復ごとに語句の切れ目が強調されるよう構成された。

映像制作に先立つ動作資料の収録には渡辺曜が参加し、旋回時の重心移動、上半身と腕の時間差、反復動作における姿勢の変化を実演した。この資料は完成映像を実写化する目的ではなく、静止画を連続的に切り替える際の身体配置と画面内の運動方向を検討するために使用された。映像の人物表現は資料をそのまま転写したものではなく、平面的な図形構成と歌詞表示に適合するよう再設計されている。

楽曲構造

楽曲は短い導入部の後に主節へ移行し、比較的狭い音域で進行する語りに近い旋律と、音域を広げたサビを対置する。主節では言葉の密度が高く、休符は文意の区切りよりも拍節上の緊張を形成する位置に配置される。これに対してサビでは同一語句と近似した旋律形が反復され、題名の語がリズム上の標識として機能する。

和声は循環的な進行を基礎とし、反復の途中で伴奏の密度を変化させることによって区分を形成している。ギターは持続的な和音の提示よりも、打楽器と同期する短いアタックを担う。電子的に処理された低音とキックは一定の推進を維持し、歌詞が扱う対人関係の停滞と、音楽上の連続運動との対照を生じさせる。

歌詞

歌詞の語り手は、恋愛関係における虚偽を認識しながら、その関係を反復する主体として記述される。虚偽は単純な事実誤認ではなく、相手への発言、自己認識、感情表現の不一致を包括する概念として用いられている。題名の「ダンス」は身体運動そのものだけを指すのではなく、相互に欺瞞を認識しつつ関係を継続する行為の形式を示している。

歌詞では一人称と二人称の距離が一定せず、告白に相当する表現と、その告白を取り消す表現が近接して配置される。この構造により、語り手の発言は直前の内容を更新し続け、単一の安定した説明へ収束しない。一方、反復される標題句は各節を同じ運動へ戻すため、意味の変化と形式の循環が同時に成立している。

映像

ミュージック・ビデオの映像は八三が担当した。画面は限定された色彩、複数の人物像、タイポグラフィを中心に構成され、人物の姿勢と文字列の移動が楽曲の拍に対応する。人物像の複数性は、歌詞に存在する発話主体の揺れを視覚的に分節し、同じ人物の心理的変化と、異なる役割の並置の双方を表現する。

映像編集では長い連続動作を提示せず、姿勢の切り替えと画面全体の変位によって運動を成立させている。この方式は、楽曲に含まれる細かなアクセントを個別の視覚変化へ対応させるとともに、静止画を基礎とする人物表現とダンスという題材を接続している。

公開と展開

公開動画は、初音ミクを使用したDECO*27の2010年代中期の作品群に位置づけられる。アルバム『GHOST』では「ゴーストルール」などとともに収録され、人間関係における発話の不確実性を扱う作品群の一部を構成した。動画公開とアルバム収録の組み合わせにより、単独作品としての流通とアルバム内の文脈が並行して形成された。

楽曲は踊ってみたの題材としても使用され、振付および身体表現を伴う派生動画が制作された。明香里夕香里によるユニットATYの映像では、原曲の細分化されたリズムを腕の軌道、身体の方向転換、二者間の位置関係へ置き換える構成が採用された。こうした実演は、原曲で比喩として示されたダンスを舞台上の運動へ変換しつつ、歌詞における接近と離反の構造を二人の距離によって示している。

関連項目