Todokanai Hoshi da to Shitemo

「届かない星だとしても」(とどかないほしだとしても、英字表記:Todokanai Hoshi da to Shitemo)は、Aqoursの楽曲である。2016年4月27日にランティスから発売された第2シングル「恋になりたいAQUARIUM」に収録され、同シングルでは「待ってて愛のうた」に続く第3トラックに配置された。作詞は畑亜貴、作曲および編曲は宮崎誠が担当している。

本作は、ラブライブ!サンシャイン!!における浦の星女学院のスクールアイドル部による全員歌唱曲として制作された。二年生の歌唱者である高海千歌桜内梨子渡辺曜は、主旋律と集団歌唱の双方に参加しており、学年単位の声域差を全体の音響構成へ組み込む役割を担っている。

制作と収録

「恋になりたいAQUARIUM」は映像付きの表題曲を中心とするシングルであるが、「届かない星だとしても」は映像の物語から独立したカップリング曲として収録された。この配置により、本作は表題曲の水中および恋愛に関する視覚的主題を直接継承せず、距離の認識と行動の持続を星の比喩によって表現している。

畑亜貴による歌詞は、到達可能性を確定できない対象に対し、語り手が接近を継続する過程を記述する。題名に含まれる「だとしても」は、対象が届かない星であるという仮定を受け入れた後にも行動が停止しないことを示す接続表現であり、楽曲全体の論理的な枠組みを形成している。星は単なる遠方の物体としてではなく、現在位置から観測できる一方で、直ちには接触できない目標として扱われる。

宮崎誠による編曲は、電気ギターを中心とするバンド形式の音響と、九人の声を重ねる合唱的処理を組み合わせている。各節では比較的限定された音域の旋律が歌詞の状況説明を担い、その後の部分で音域と声量が拡張される。サビでは題名に対応する表現が反復され、個人の発話として始まった内容が集団による宣言へ変化するため、歌詞上の主体と実際の歌唱人数が一致する構成となっている。

歌詞の構造

歌詞は、対象との距離を認識する段階と、その距離を理由として感情を放棄しない段階を交互に提示する。ここでいう「届かない」は恒久的な不可能性を証明する語ではなく、歌唱時点において接触が成立していない状態を表す。この時間的限定によって、題名の仮定と歌詞中の前進的な動詞が矛盾せずに併存している。

星のイメージは、天文学における物理的記述よりも、観測者と対象との関係を整理するために用いられる。対象は遠距離に存在しながら視認できるため、歌詞の主体はその存在を疑う必要がない。問題となるのは対象の実在性ではなく、現在の手段によって距離を縮められるかという点であり、その区別が楽曲の反復構造を支えている。

また、歌詞は達成後の状態を具体的に描写せず、接近を続ける行為そのものに叙述の中心を置く。このため、最終部分に至っても星への到達は物語上の既成事実にならない。楽曲は未解決の距離を残したまま終結し、題名で提示された条件文を音楽的な反復によって維持する。

歌唱編成

一年生の歌唱者は津島善子国木田花丸黒澤ルビィであり、それぞれ異なる音域と発声を用いながらユニゾンへ加わっている。三年生では松浦果南黒澤ダイヤ小原鞠莉が同じ歌唱単位を構成し、低音域を含む声部とサビの集団音声を補完している。

九人の歌唱は独立した人物による順次的な発話と、全員による同時的な発話に分けられる。独唱部分は歌詞の主語を一人称として明確化し、全員歌唱では同じ内容を集団の経験へ拡張する。この切り替えは、Aqoursの楽曲で広く採用された声部構成と一致しており、本作だけに固有の登場人物や語り手を追加するものではない。

渡辺曜を含む二年生の声部も同一の原則で配置されており、個別の音色は短い歌唱区間で提示された後、他学年を含むユニゾンへ統合される。その結果、特定の歌唱者を中心人物として固定するよりも、九人が同じ条件文を共有する形式が優先されている。

発売後の位置づけ

収録シングル「恋になりたいAQUARIUM」は、2016年のオリコン週間シングルランキングで第3位を記録した。「届かない星だとしても」は同一商品に収録されたため、販売記録上は表題曲および「待ってて愛のうた」と共通の集計対象となり、単独シングルとしての順位は設定されていない。

本作はAqoursの初期公演において九人編成で演奏され、録音版の学年横断的な構成が舞台上でも維持された。映像付き表題曲とは異なり、上演時の身体配置と照明が主要な視覚情報となるため、星および距離という歌詞上の概念は、舞台空間における歌唱者間の位置関係によって表現された。

楽曲史上では、Aqoursの活動初期に制作された全員歌唱曲の一つに位置づけられる。表題曲が特定の舞台設定と映像的物語を伴うのに対し、本作は条件文を中心とする抽象度の高い歌詞を採用しており、同じシングル内で異なる叙述形式を提示している。

関連項目